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プラモデルを作る硬派なブログだよ!

6月某日1

6月某日

就業時間が近づくにつれむしゃくしゃしていた。東京の親会社のあまり関係ないおじさんと呑むことになっていたのに、待ち合わせ場所の連絡が来ないからだ。新幹線の中だからだろうか。以前教えてもらった携帯電話にかければいいが、自分の携帯番号をあまり関係ないおじさんに知られたくなかった。なんだかんだ連絡取れなかったと言ってすっぽかしたかったがそうもいかない、親会社の人だから。あまり自分とは関係ないとはいえ。

この人と飲むのは二回目だ。一回目にぜひ飲みましょうと返事した後も、なぜあまり関係ないおじさんと1対1で飲むのか全く訳が分からなくて後悔した。まず会社の人と1対1で飲んだことなどないのに。今回は返事する前から後悔していた。

結局電話して予め決めていたドイツビールの店の前で落ち合った。前回の大学生しかいないような居酒屋よりは居心地が良いお店だった。地鶏の唐揚げがうまい。ピルスナーは泡がグラスからこんもりとはみ出ていた。

余り関係ないおじさんは自分のことをよく話す。聞いているだけで良いので楽だったが聞いているだけのあまり関係ない子会社社員と飲んでも楽しくないだろうと思ってちょくちょく話をしようとした。ある作家のエピソードの話をしようとしたらその作家と同姓同名の社員の話になってしまった。共通項がないから好きな本の話もできないが、業務中にスケベなサイトを見る、私の好きな作家と同姓同名(漢字は1文字違い)の男性社員の存在を知ることができた。

会社の話をしていたがあまり関係ないおじさんと私は共通の知人も少なく、私から話すようなことはほとんどなかった。あまり関係ないおじさんは2杯目の終わり頃からプラモデルの話をし始めた。コロナ禍で暇を持て余してアメリカの車のプラモデルを数十年ぶりに作り始めたが、これが面白い。なんでも今また車のプラモデルが人気なんだそうで、プラモデルの置いてある店に行くと今まで目に止めたこともなかった外国の車のプラモデルが、どうにも鮮やかな色を放って自分に語りかけてくるように感じる、自分はこまめな性格でもないしわざわざ細々と色を塗るようなことまではしないが買っては大まかに組み、買ってはまたそれらしく大雑把に組みというのを繰り返すようになったという。時間潰しに作るのは良いが自分の満足の行ったものではないから、ある程度形になったらなんだか適当に積んで、後は頃合いを見て奥さんがいつの間にか処分しているとのことだった。なるほどその人は自分の作ったプラモデルを後生大事にしていそうな人物には見えない。今通ってきたビルの3階だか4階にも良いお店があるはずなんだ、今度週末を挟んでこちらに来た時に一緒にどうかと言われた。私は自分の趣味についてその人に言ったことはなかったので何故そのような男の趣味に付き合わそうかと気が向いたのかはわからないが、あぁ、それは楽しそうですね、工作は苦手ですがちょっと見てみたいですとそれらしいことを言っておいた。あまり関係ない親会社のおじさんと趣味を共有するつもりのなかった私は困ったような如何ともし難い気分になりながらもしあの輸入プラモデルの店に一緒に行くようなことがあれば塗装役を引き受けてみようかななどと考えながら、明日は私も出社ですと適当なことを言って2軒目は断って引き上げた。(次の日は在宅勤務だった。)(ちなみに次の日PCの電源を忘れたことに気が付いて結局昼から出社した。)

よくよく考えたら美味しい美味しいと言いながら私は唐揚げを一個しか食べずに押し付けてしまったし水茄子はほとんど私が食べてしまったしすっかりご馳走になったし改札を通った後2回振り返っても私の方を見て手を振ってくれた。メールは私が会社を離れた後に気づいて返信したらしい。電話してくれて嬉しかったと言われてなんだか申し訳なくなった。ちなみにこの文章上部段落冒頭「会社の話を」から「~考えながら、」の部分は全て私の嘘で妄想だ。帰宅したら携帯に今日はありがとうメールが来ていたので読まなかったことにして二日後くらいに会社のメールに返信しておいた。お昼に部長に本社の人に飲みに誘われたら行かなきゃいけないのかとそれとなく聞いたら別に無理に行かなくても良いけどまぁ行けたら行ったほうが良さそうだったので33%くらいの確率で今後も誘いに乗ろうと思った。